愛そして憎しみ 
私は、愚か者ゆえ人を見極める眼がなかった。
奥様を亡くされ、
みすぼらしい格好をしていた彼が気の毒で一途に尽くした。

彼も私に一目ぼれして愛してくれたので2年間の交際後
結婚をした。

娘さんに遠慮して最初の2年は別居していたが、
娘さんが「家に来て下さい。」との願いを聞いて嫁いだ。

その頃の娘さんは25才でアパートに出て独立をしたものの、
その後もずっと回りの親戚の人達に迷惑をかけていた。

結局、一人暮らしが出来なくて29才で戻ってきた。
こんどこそ、病院勤務を一生懸命にする気で頑張っている。

隣へ引っ越して5ヶ月経っても電気製品も買わずに借りに来ている。
「古いアパートは売りたい。」主人がローンを払い終えたものを、
自分が売りたいと言う欲の深さには驚いてしまう。

私は、権利は有っても資産放棄をして争いはしたくない。
この家も貸家も何も要らない。

主人は、どんどん派手になり遊びも常識を超えたものになる。
彼を知る友達は、昔から無類の旅行好きでプレイボーイと聞いた。

将来は、どうなるか誰も判らないし、主人とずっと暮す場合は
狭い部屋でもボロな中古家でも、お互いの趣味を持って仲良く暮したい。

しかし、彼の頭の中の図面は全部判っている。
その時はその時、先の事まで心配していられない。

彼が、春の天気のように変わっても私は、彼を一度も裏切った事はない。
人を憎んではいけないと祖父が教えてくれた事を思い出し、
帰ったら自分の感情を抑えて普通に振舞えばいい。