水枕
真冬の間、二階の空き部屋を使用しなかったので片付けをしていた。
押入れの奥から懐かしい水枕が出てきて驚いた。

今時、水枕を見た事もなく、
家族が高熱を出した時も探す事もない水枕。

誰かが寝込んだ時は、アイスノンか冷えピタを貼る程度で
風邪が治ってしまう。

真ん中がへこんでいる水枕を思わず抱きしめた。
子供の頃、高熱を出すと直ぐに出てくる水枕が懐かしくて
これからは使おうと思う。

氷を入れた水枕に寝るとゆらゆら船に乗っているような感じがし、
ぶくぶく音がしていた。

数時間が経ち、夢から覚めれば枕元に温かいスープとお粥を持った
母が、「お熱はどう?お薬を置いておくから飲んでね。」

私の額を触り、「下がったみたいね。」安心してお店に出て行った。
あの頃はお店が忙しく、
熱を出しても何時も一人で奥の部屋で寝ていた。

母に抱いて貰った想い出はない。何故だろう。
父に背負って貰った思い出は今でもはっきり覚えている。

今日は、風の冷たい日中だったが時々晴れて
隣のお宅の庭に桜が咲きはじめ、春らしい光景にうっとりする。

温暖な静岡市は少し雪が降った。
これは最も遅く雪が降った昭和33年3月29日の記録と
同じ事になる。