23才初夏の事 
好景気が続いていた昭和50年代、景気に陰りが出始めた
中小企業、商店も出てきた頃だった。

その頃の母は、病気の合併症が出て外出もできず、
真っ青な顔をして痩せ細っていた。

父も高齢の身で一所懸命働いても、相変わらず生活は苦しかった。
そこで両親は、家を建て直す為に私の人生を変えてしまった。

私は苦しかった。両親も影で泣くほど苦しい選択をしたと思う。
その時、どんな環境の中にいても耐えれば笑える日がくると信じていた。

辛い事ばかりじゃない、楽しい事もあると自分に言い聞かせていた。
23才と言えば友達は、自由に楽しく遊んだり恋人と交際したり、
一番、楽しい年頃。

しかし、私は23才には二度と戻りたくない。
あの頃は、両親が大嫌いだった。年月が経てば憎しみも薄れて

今では、哀れな両親に天国で幸福になって貰いたいと思う。
お盆がくる前の今月、お墓参りに行きたいとふと考えた。

どんな親でも、子供の可愛くない親は居ない。
私を産み育てゝくれた親だから、私の幸福を願っていたと思いたい。

お父さん、お母さん、会える日まで約束は出来ないけれど、
きっと会いに行くから待っていて下さいね。と夕方の空に誓う。