020「郷愁」
戦時中は厩舎だったという
木造二階建ての一角
皆といた部室は薄暗く
グランドをはさんで建つ
新校舎とは対照的
思い出は
薄暗闇と輝きの二重構造

今 故郷を訪ねれば
それらはあとかたもなく
現代建築の新しき校舎が建つ
バスの窓越しに
それをとらえる私の眼は
過去のネガフィルムを重ねて
ただ郷愁という色を塗りたくる