2002年10月の記事


「言葉の料理人」
その手捌きで

愛は

悦びになる
悲しみになる
苦しみになる

夢は

理想になる
現実になる
幻になる

わたしのコトバは

解体され
別なものに
生まれ変わる

あなたの手捌きが
わたしを満足させる
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「想い人へ」
黄昏の時をたたむは
薄闇の陰に潜む偽りの
足早に駆け抜ける
想い煩う我の白絹

求めてはならぬ
恋うてはならぬ
とどめてならぬ
想いや何処
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「庶民」
等身大の幸せと
等身大の不幸せ
平和ボケのまま
恨むことなく
悲しむことなく
笑ったままでこの世を去る
歴史の端布を
懐にして
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「すすき野」
十三夜の銀に彩る
川原の肖像
象られた思い出に
しんとする 風
水面のさざめき
逆らう月の光に
輝く穂先

汽笛が聞こえるのは
幻聴か
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「休日の朝」
Be quiet! Be quiet!
と激しく囀る小鳥に
笑いをこらえ
晴れた空をベッドの上から窓越しに
見上げる

「朝だよ」と
あなたの耳元に囁いてみるが
まだ夢心地
そっと 起きて
ひとりで朝のコーヒーを飲む
読みかけのページをめくる

いつもの朝に
違う次元が扉を開ける
いつもの休日
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「カーショップ」
ガラス越しの日差しに
車のメンテナンスを待つ
わたしの皮膚は
夏を思い出している

しょうもない万国旗
有線放送のあいまいな音楽
つけっぱなしのテレビジョン
切り取られた日常は
現代アートの亜空間
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「敬慕」
まとわりつく幼子のように
コトバが意識に
じゃれついてくる
嗜めようと
手を伸ばすが
暴れて捕まえられずに
わたしはふざけて地団太を踏む

あなたのことばを
大切にいとおしむ
両の手に受け止めて
そっと くちづける
そっと 飲み乾す
わたしの中にあなたが入る

わたしのコトバを
あなたに贈る
あなたのまわりで
いつまでも 羽ばたいていられるように
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「迷宮」
出口を探すには
風を見つけよう
風は出口から入ってくる
手招きをするように

ほのかな光を感じよう
体中の感覚を研ぎ澄ませて
光は出口から入ってくる
抱き寄せるように
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「残照」
橙色の風紋
緋色の簪


季節の終わりの
嵐の置き土産
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