2001年04月の記事


「羨望」
     憧れという名前の企み

     絵に描いた餅

     手に入れることのできない
     片思いの恋

     邪心を伴う諦め

     止まらざる行為が破局に向かう
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「花簪」
     春の お色直し

     風色に染め上げる
     季節の美容師
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「無言電話」
     受話器の向こうに
     あなたがいる

     どう受け止めたらよいのだろう
     沈黙の抗議
     呼びかけても
     きっと答えてはくれない
     解ってほしいのは
     わたしも同じ
     だから沈黙を返す

     ひとときの同化

     受話器の向こうに
     あなたがいることだけが
     わかっている
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「時間」
    留まることを知らぬ流れ
    それは
    変化すること無く
    ひとびとに同じように
    分け与えられた
    白い糸
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「予知夢」
     新しい教科書に
     三女の名前を書き込む
     けして
     使われる事の無い教科書
     三女にとっては
     意味不明の文字の羅列

     ずっと以前
     まだこどもだったころ
     大人になった自分が
     幼い女の子の手をひいて
     異国の町を流離う夢を見た

     これから
     長い月日
     わたしは三女と
     たどり着けるかどうか解らない
     目的地へと歩くのだろう
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「幕間」
     一瞬の緊張を妨げるように
     光が空間を貫く

     戦いの幕間
     祈りを捧げる
     愛するものへの鎮魂
     未知なるものへの信仰

     永遠に幕が上がらぬことを
     祈り続けるわけにはいかない
     叶わぬ願い

     さあ、幕が上がる

     観客の期待を裏切ること無く
     すべてが終演に向かう
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「ギャンブル」
     負けるのが嫌いだから
     やらない

     傷つくのが怖いから
     恋はしない

     それでもたったひとつ
     大きな賭けをした
     「結婚」という名のギャンブル

     結果はまだ先の話だろう
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「祝宴のあと」
     タイをかなぐり捨てて
     カジュアルモード

     恋のひとつも
     囁いてもいいが
     その気になれない
     ローテンション

     お座なりの祝辞と
     主催者の自己満足
     喜びを分け与えたまえ
     価値観の違いを見越して

     愚痴をこぼすぐらいなら
     欠席届を投函すれば
     すむこった

     自分の選択を
     棚に上げる
     情けない時間
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「搾取」
     データベースコアより
     他人のDNAデータを移植
     わたしは他人になりすます

     あるいは

     植物のデータを取り込む
     わたしは人間ではないものに
     なってしまうのだろうか
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「花曇り」
     薄墨色の空

     麦畑を渡る風

     雲雀の声だけが春
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「天文学」
――こどもの認識――

研究員「今日はどんな星が見えるでしょうね」
こども「土曜日だから、土星」
研究員「確かに土曜日ですけれど、この時期は
    土星が良く見えます。で、土星は太陽
    から6番目の惑星ですね」
こども「月火水木金土、ほんとだ。6番目だ」
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「電脳的自殺行為」
     データベースコアより
     我のDNAデータ全てを抹消せり

     誰にも我の存在確認不可

     コアは我の「死」を認める
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