痒い所はないですか?
桂の木は枝ばかりが目立って、黄色い丸い葉が数えられるほどしか残っていない。

春に新芽が出るのが遅くて、
もう枯れてしまったかと心配した合歓の木は、ツリーの飾りのように、
枯れた大きな豆をぶら下げている。
よく見れば、裸木に見える枝先に、春用の赤い小さな新芽をつけている。

アンテナの向こうに見える空は薄青くて、白い雲が浮かんでいる。
誰も座っていないベンチは、寂しいと言うより滑稽に見えるのはなぜだろう。

午前中、美容院へ予約して出かけた。
洗髪時にいつも『痒い所はありませんか?』と声をかける。
あれはやめて欲しいといつも思う。
やんわりと、
「痒い所を言う方っていますか?」と質問したら、
特に年配者は、はっきりもっと洗って欲しいとか〜
おでこの辺りが痒いとか〜言うそうです。

若い方は、毎日シャンプーしてるからあまり言わないんだそうですよ。
「はっきり仰っていいんですよ」と言われたけれど・・私は別に痒い所なんて無いからいいです。

どこの美容室に行っても、そう言われるけれど、
なんかいつもおかしいと私は思っているのです。

ほんのり空は橙色に染まって、タツノオトシゴみたいな雲が流れて、
恐竜になったかと思ったら、つちのこに見え出した。

公園の柵の向こうから、笑顔のおばあちゃんが「いい顔の幸せなワンちゃんね」と声をかけられた。

もっと夕暮れていく空を眺めていたかったけれど、
宿題があるのを忘れていた。

ちょっと目を離したすきに、もう東の空は茜色に燃えて天空は藍色に染まっていた。