「孤独なギタリスト」
<<スペイン>>--マドリッド--


プラド美術館の前で、一心にクラシックギターを奏でるギタリストの後ろ姿。

人通りの途絶えた広場で、彼は真剣に難曲をこなしていた。

日本に来て、この演奏振りを披露したら、ひとかどのミュージシャンとして、注目を浴びたであろうほどの、テクニックである。

しかし芸術家に有りがちな、器用貧乏と言うのだろうか、本場スペインでは、才能が有っても、商才が無ければ成功しないのであろう。

そんな私の思いを他所に、彼は自分の奏でる音色に、没頭しているように思えた。

グェル公園のフラメンコギター奏者の若者と違い、自分のCDを売っている訳でもなく、ただギターケースの中に、チップを置く缶が置かれていただけであった。

カメラを少し引いて、孤独な彼の姿を、美術館の庭の点景として表現してみた。

彼の弾いていた「アルハンブラの思い出」の曲が今でも耳に残っている。