「驚きの光景」
<<インド>>--ヴァラナシ--


一見何の変哲も無い光景だが、此処に映し出されているものは驚愕に値する。

何が驚きかって…こちらを見る少年か少女か見分けが付かない、可愛い子供の大きな目ではない。

店先に立て掛けられている梯子らしき物である。

アラムさんが、あれは何だか分かりますかと聞いたので、即座に梯子と答えた。

しかしそれは見事に外れ、何と死者の遺体をこの梯子状の上に横たえて、ガンジス河まで担いで運ぶ道具なのだと言う。

更にその脇で売られている綺麗な布は、死者に掛ける聖布なのである。

この話を聞いた後、二件ばかり実際に遺体を運んでいる場面に遭遇したものである。

ガンジス河沿いに有る火葬場も見学したが、撮影禁止であり、その場面はお見せ出来ないが、ガンジス河が一望出来るその場所は、無蓋の広い場所で、たくさんの遺体が荼毘に付されていた。

例えようのない匂いが周囲に立ち込め、鼻を摘んで周囲を一巡したものである。

灰になった遺体は、係員がガンジス河にスコップで投げ込んでいた。

こうして人間は、聖なる河に還る事により、昇天出来るのだと言う。