2016 11/28 21:33
Category : 書評
一族滅亡の回避 明智憲三郎著『「本能寺の変」は変だ』.
明智光秀の子孫による歴史捜査授業.こう提示する本書が静かな読書ブームに火をつけている、と.
著者の講演をうかがう機会があった.
「謀反の根拠は秀吉が命じて書かせた軍記物に依っている」
「謀反をするには確実に成功させる、見込みのない危険はおかさない」
「信長がめざした『唐入=からいり』が強行されると、明智一族は滅亡の危機にあった」.
「歴史捜査」「三面記事史観」など、独自の歴史解釈法を示す.
歴史家に「史料批判の不足」「時代常識の欠如」「公人としての信長の思想構造に無理解」.
話を聞いていて考えた.
戦後の科学的歴史研究では「下部構造」に関心がそそがれ、戦国武将の位置関係はある意味、検討対象となりにくかった.
思想史を過小評価し、武将の思想構造の研究が対象外、
伝承を象徴的表現ととらえ、有意味性を読み解く力量が十分に機能しているとは言いがたい.
著者が示した通説批判は、的を得ているかと考える.しかし著者が申されるほど、歴史家の多くが「歴史捜査手法」を怠り、あるいは「三面記事史観」で業をなしているとも、認めがたい点はある.(文芸社 2016年)