視線を内に、顧客目線で自分がかわる 久繁哲之介著『商店街再生の罠』
 視線を内に、顧客目線で自分がかわる 久繁哲之介著『商店街再生の罠』.

 タイトルがドキリとさせてくれる.「罠 わな」の提起は、おだやかではない.
 読んでいくとどうも、当事者自体が<落とし穴>に陥っている、<陥穽 かんせい(動物などを捕らえたるためにしかけられたワナ)>、その状態を指摘したいようでもある.

 <良かれ>と重ねる施策.しかし、解決や課題認識の<基本>に<立ち返っていない>と、指摘しているようでもある.

 「レトロ商店街」
 「キャラクター(成功事例は学びの宝庫 テーマパーク商店街」
 「B級グルメ商店街」
 「商店街を利用しない公務員」
 「意欲が低い商店主」
 「再生戦略(1) シェアで雇用・起業」
 「再生戦略(2) 地域経済循環率」
 「再生戦略(3) 地域コミュニティ」

 
 「商店街を利用しない公務員」や、「再生戦略(1) シェアで雇用・起業」で紹介されるコンサルタントの所業など、「たしかにそうだ、が、そこまでやるか」と、うなづくばかり.

 <商店街活性化と地域おこしは、違う>とする.
 身銭をきる勉強をしない、エリート.
 補助金、利用者よりも国、都道府県の役所、成功例のモノマネ、美しいく拒否できないことばでつづる施策説明. 
 役人は仕事をしているが、そのことと「施策が成功しているかは、別」といっている.

 二つの側面の、指摘を読み取ることができるか. 
 メディア、メーカー、官、金融に象徴されるエリートが、「国民は安価なら、この程度で満足するはず」という、ある程度の「思いあがり」.
 他方で庶民というか、ユーザーが個別分散化させられている.
 他方で価値観、味覚、文化に劣化がおこり、低俗を<普通>と訓練される消費行動.

 必ずしも、メディア、メーカー、官、金融に象徴されるエリート性を示しているわけではない.
 しかし、そうしたエリート性と庶民との間にあって、制度を動かし良かれと行動しつつも、結果は格差と徒労がうまれる.
 そと点が、著者の主張点ということは、示されているようにおもうのだが.

 久繁哲之介著『商店街再生の罠』、「~売りたいモノから、顧客がしたいコトへ」のサブタイトルがある.(ちくま新書 2013年8月).