有元正雄著『『宗教社会史の構想―真宗門徒の信仰と生活』ー』
 有元正雄著『『宗教社会史の構想―真宗門徒の信仰と生活ー』.
 本邦で最大の信者組織をもつとする真宗教団の、機能面を組み立てようとする意図をもつかにみえる.

 教団を論ずるとき、その構成者が教義や思想系譜、信者結合の中退を内部から論ずることは当然であるが、それを組織の外から論じ、社会的位置の客観化をめざすところに本書の意図が存在するのであろう.

 親切・勤勉・節倹・忍耐を真宗エートスの一つと考え、これを「仏法為本・王法為先」の論理のなかにすえることで、封建権力とのすみわけを果たしてきたとする.

 中世に誕生した真宗教団は、近世への移行期に「朝廷」「封建」とならぶ「寺院勢力」として、君臨する.
 信長の弾圧、秀吉とのバランス、それが徳川政権とはどう対峙するか.「四恩」を言い(8p)、「父母」「三宝」「国王」「衆生」の恩に「国王恩」を含み点に、生き延び、門徒を守る<解義=げぎ>の組み立てをみるか.

 門徒の地域分布を(1)北陸門徒地帯、(2)西日本門徒地帯、(3)近畿門徒地帯に三分する(49p).
 北陸門徒地帯での「勤勉・忍耐」「間引き堕胎回避」「大工・木挽きの出稼ぎ」に、「」がいわれる.
 
 薬製造、売薬の分野で広く全国を行脚したことに、真宗が病気平癒祈祷をおこなわぬ裏返しとしてあり、門徒にも合理的生活習慣の浸透を読む.

 ほかにも「繭沸騰」による殺生、北海道・ハワイ・南米への移民・移住もこの教団で見られる営為.

 真宗の寺院が地域で占める割合=第1位(寺院率)の高い地域で、教義とエートスが暮らしを規定する.
 その一方、定信の時代に土地緊縛の封建制原理を超えて、関東に入り百姓、出稼ぎが幕府の政策原理としても選択されたものであることを、指摘している.