高杉良著『小説 日本興業銀行 第四部』
 高杉良著『小説 日本興業銀行 第四部』。高杉良の企業小説の興業銀行編の第4部。

 最後は、富士製鉄と八幡製鉄の企業合併をめぐる独禁政策に新しい解釈が主題。主役ともくされる興業銀行中山素平頭取は、会長職を自らえらびシンボル的存在になるも頭取ー会長職間の移行期に、合併劇の二枚目役というか、黒子役をはたしたということに、なるらしい。

 日本製鉄が財閥解体で二社に分割、国際競争力の向上の時代に統合をめざすが、近代経済学者たちの見解、公正取引委員会の独禁政策、とりわけ富士製鉄がわに釜石製鉄所の切り離しに対する社内の抵抗という点があった。

 製紙業界の三社合併は独禁政策の壁をやぶることができなかったが、製鉄業界が結果として合併劇を達成したのはどういうことか?。永年の疑問であったが、その移行過程が幾分、開示されたことになる。

 それはそれで意義があるのだが、第一部の冒頭が山一証券をめぐる田中大蔵大臣の決断の場面で幕を開き、本書の冒頭で、決断にいたる過程が提示される。この間に、第二部と第三部。それはそれで、書き手の構想力と表現力に一目、開かねばなるまい。