藤原正彦著『天才の栄光と挫折―数学者列伝』。
 藤原正彦著『天才の栄光と挫折―数学者列伝』。国際的に評価される8人の数学者が登場する。これまでの数学史なるものが、「業績紹介に重点が置かれ、人間像が浮かばなかった」との視点から、生まれ育った風土に注目。ここでは風土とは「自然、歴史、民族、文化、民俗」と規定する(Imformation).

 ニュートン、関孝和、ガロワなどはお馴染みながら、ハミルトン(英)、コワレフスカヤ(露)、ラマヌジャン(印)、チューリング(英)、ワイルズ(英)などとなると、門外漢には聞きなれない。

 大陸で著名な数学者が発生するのはともかく、日本やインドでは研究の蓄積と言うか、研究情報が決定的に不足しているように思える。しかしながらだ、それこそ「数学的ひらめき」というのかが突然にあらわれ、研究者が誕生するとの感がある。

 数学の世界には「予想と証明」ということが、あると知った。予想は簡単なことながら、証明することは難しいのだと、する。「予想」とは、「作業仮説」のことか。

 藤原正彦著『天才の栄光と挫折―数学者列伝』。英国・チューリングの暗号解読が数学的思考のなせる技と説明され、人命・軍艦を救ったとある。のちにコンピュータ開発にも名を残すらしいが、数学の可能性というものを示しているかの思いがする。

 全体として、数学のどの領域に対する貢献なのか。そのあたりはあまりに高度すぎて、一読では位置を確認しがたい。
 そこには決定的な知識不足のゆえーと、言うことになるのであろう。(日本放送出版協会 NHK人間講座 2001年)。