石川文洋談「写真を撮る 人間を撮る」
「どこで生まれ育ったかで政府軍に入るか、解放戦線に入るかが決まってくるんですよ」(122p)。1960年代、ベトナムで展開されたアメリカ軍の戦い。南ベトナムの農村は、政府軍支配区、解放区、競合区とわかれたが、ベトナム人同士で殺しあいをするその区分が、「どちらの側で戦うか、それは運命なのです」(同)と見通す。

ベトナム戦争の最前線で、危険をおかしつつ報道写真家として画像を送りつづけた。戦場でシャッターを押す時も、「世界の美女」を写真集で送りだすときも、「そこに心が動いたからシャッターを押す」(163p)のだと
する。他方で、週刊誌、月刊誌が「ドキュメントを扱わなくなった」と、日本が豊かになったことの「裏返し」と指摘(162p)。
(読者が)読まなくなったのか、(出版社が)読ませなくなったのか。そこが聴きたいところではある、が。
 「違った立場に生まれた人々が、政治の力によって殺しあう。それが戦争だと想いました」。NHK「知るを楽しむ」のテキスト(2008年2月)。