ローレライ伝説
なじかは知らねど心わびて 昔のつたえはそぞろ身にしむ
わびしく暮れゆくラインの流れ 入り日に山々赤くはゆる
うるわし乙女の巖頭に立ちて 黄金の櫛とり髪の乱れを
梳きつつ口ずさぶ歌の声の 神怪しき魔力に魂も迷う
こぎゆく舟人歌に憧れ 岩根も見やらず仰げばやがて
波間に沈むる人も舟も 神怪しき魔歌謡うローレライ

近藤朔風訳 ハイネ