夜は間違っている
「いいますとも、何度でもいいますとも」と宵の明星がいいました。
「夜はまちがっているんです。千度でも、万度でもいいますとも」
おまえたちのいうことは、もっともよ」
月はいいました。
「わたしは、いままで そのことを口にだすのは遠慮してましたけれど、わたしほど、夜をよく知ってる者はいないわ。
そして、たしかに、夜はぜんぜん、まちがっているんです。」
だれも、なぜ夜がまちがっているのか、考えてみる者はいませんでした。
みんながそういっているのだから、それでいいのです。

「月がほしいと王女さまが泣いた」
E・ファージョン