2003年03月の記事


スタイル
軍服も棺桶も器から入っていく
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イキドマリへ行こう
紫色の悪夢
逃げて逃げてどこまでも逃げて
夢はいつも イキドマリで途切れていく
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墓場の猫
墓場は いちばん安上りの宿屋である
ラングストン・ヒューズ
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夜は間違っている
「いいますとも、何度でもいいますとも」と宵の明星がいいました。
「夜はまちがっているんです。千度でも、万度でもいいますとも」
おまえたちのいうことは、もっともよ」
月はいいました。
「わたしは、いままで そのことを口にだすのは遠慮してましたけれど、わたしほど、夜をよく知ってる者はいないわ。
そして、たしかに、夜はぜんぜん、まちがっているんです。」
だれも、なぜ夜がまちがっているのか、考えてみる者はいませんでした。
みんながそういっているのだから、それでいいのです。

「月がほしいと王女さまが泣いた」
E・ファージョン
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静謐
あなたには花の吐息が聞こえますか
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野辺の花
詠み人知らずないきいきとした生命力に
いさめられることもある
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ペルソナ
人は いくつもの仮面を持っている
善の仮面のほうが重くできている不思議
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月に雁
ならば、皿には なにを盛りつけたらよかろうね
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桜鬼
待ちきれないでいるかのように
一本だけ花を開かせた桜の樹

爪の先ほどの月になったら
鬼女が影と踊っていることだろう
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王者の咆哮
そこにビルがあれば 登るだけの話だっつうの
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星泥棒のダフ屋から星をひとつ買ってみたが
朝になると消えてしまった
贋物をつかまされたようだ
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待ちぼうけ
膨れあがった太陽は
明日も約束してくれるだろうか
ねえ この際
電車のダイヤを気にしている場合ではないよね
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ピリオド
人生の用意されたシナリオを
水の中に放りこむ
きっと魚が食べてくれるに違いないさ
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墓地に行く道
子供のときの秘密基地
で、なにを埋めたんだったっけ
黒猫はにやりと笑ってみせるが
教えてはくれない
冷たいなあ
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たんぽぽのお酒
夏の日を閉じ込めたかったら
試してみ給え
とプラッドベリ先生は仰った
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白木蓮
花の形は月の光で目覚めるブンダリーカ
香りは蘭
時に自然は高貴な調合を配して見せることがある
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行きはよいよい
毎日、エレベーターに乗りこんだ
たくさんの人々が
行方不明になってるのは
ここだけの秘密
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影をなくした男
影がなくても
案外と誰も気づかないもんなのさ
自分のことだけで精一杯だからね
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欲望の飼育
欲望ってやつはなんでも食べちまう
最後は宿主を飼育して食べちまう

できれば小さい器で育てるべし
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からくり人形
鉛の冷たい心臓
錆びた笑顔
凍った眼球

彼は使い手を待ち続ける
飾られるための人形ではないのだから
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名前
人はみな
妖精の名づけ親からもらった名前と運命を
持っている
ただ思い出せなくなっているだけなのだ
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えとらんぜ
「でも、あなたがそんなにお逃げにならないでも、いつか、みんな過ぎ去ってゆきますわ。
地球が廻ってゐるのが何よりですわ。」
「ぼーるさん、あなたにはまるで時間も歴史もないんですね。」
「さうね、あたしには今といふ時があるばかりだわ。」

竹久夢二
「旅をする人はみんな好い人です」
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神の設計図
秘密と暗号のちっちゃな羅列
ねじれた螺旋の鎖には
奇魂・幸魂・和魂・荒魂の四魂
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そして詩人は語るのだ
――そして詩人は語るのだ、星の輝く夜になると
摘んだ花を探し求めにおまえが来ると、
長いヴェールに横たわる蒼白いオフェーリアが
大きな百合の花のように流れを漂うのを見たと

ランボー「オフェーリア」
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辞世の句
しら梅に明る夜ばかりとなりにけり 与謝蕪村
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命を誇る季節は
疎ましく恐ろしくもある
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既視感
遥か昔にも眺めていたように
錯覚してしまう場所がある
刷り込まれた記憶が私のものでないならば
私は誰なのか
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春が来た
ゆっくりと目を開いた私に鳥が囁いた
気づけば、春
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新しい火をともそう
火が美しいのは
生きるということに どこか似ているから
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うつくしいもの
わたしみずからの中でもいい
わたしの外のせかいでもいい
どこにかほんとうに美しいものはないのか
それが敵であってもかまわない
及びがたくてもよい
ただ 或る ということが分りさえすれば
ああ ひさしくも これを追うにつかれたこころ

八木重吉
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