2003年02月の記事


真珠光
病んだ憂いが錆びていく夜よ
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カメラ
カメラの心臓の音が聞こえることがある
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めざめ
肉体を滅ぼし、ここに至る
しかし風は甘いのだ
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黄薔薇
歓喜の庭には黄色の薔薇こそふさわしい
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象頭人神
ガネーシャの右の牙が欠けているのは
月に向かって放りあげたからさ
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寝待月
19番目の月の夜に
鏡の秘めた物語を知った
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酸の雨に打たれ
溶解され流れていくさまは
まるで、涙を流しているように思われた
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土竜
はじめの小さな哺乳類たちは、生きる場所を求めて、あるものは地下へ、又あるものは木の上へと進んだ
恐竜たちが絶滅したあと、地球はこれら哺乳類の全盛時代を迎えたという
そして今、汚染された大地から逃れ、地下へと居住を移した人類は、退化した眼のせいで、太陽を直接見ることは適わなくなっている
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再生の筺
彼女は「秘密」を入れていく
大きな秘密も小さな秘密も
毎日、会社の帰りに入れていく

全ての秘密を埋め終わると
彼女は鍵を投げ捨てて
嬉々として新しい秘密を作りにでかけた
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シャム双生児
ふたつの中身に ひとつの器
寄生しているのは、あなたと私のどちらなのだろう
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一幕見席
歌舞伎の公演の中で一幕だけを見ることが出来る歌舞伎座独自のシステム
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開幕
人生の悲劇の第一幕は親子となったことにはじまっている
芥川龍之介―侏儒の言葉
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道行
此世の名殘、夜も名殘、死にに行く身を譬ふれば、あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く、夢の夢こそ哀れなれ
近松門左衛門
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ジュラシック・パーク
琥珀に閉じ込められた恐竜のDNAの代わりに
現代ではビニールに密封された恐竜を量産している
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もか
憂鬱はミルクにくるくると溶かし
溜息は砂糖壷の中にしまおう
悪魔と天使が和解するひとときもあるのだ
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籠の中の鳥
いつでも自由に外に飛び出せると
考えている鳥が殆どだ
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偶像崇拝
宗教では禁じられていても
経済ではもてはやされる都合のいい手法
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異界
深夜の電話ボックスの噂話
ここだけ、いつも人の気配がないのは何故なんだろう
鶏と卵はどちらが先に生まれるのか
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ヒトと同じは嫌なの
人々が求める他者との差異とは、その実、ごく僅かなものでしかない
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チューリップ狂時代
欧州で異常な投機熱により、チューリップが高値取引された球根(BULB)のバブルなひととき
ひとつの球根とビール工場が交換された例さえもあった
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オッペルと象
ある晩、象は象小屋で、ふらふら倒れて地べたに座り、藁もたべずに、十一日の月を見て、
「もう、さやうなら、サンタマリア。」と斯う言つた。
「おや、何だつて?さよならだ?」月が俄かに象に訊く。
「えゝ、さよならです。サンタマリア。」
「何だい、なりばかり大きくて、からつきし意気地のないやつだなあ。仲間へ手紙を書いたらいゝや。」月が笑つて斯う云つた。

「オッペルと象」宮沢賢治
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虚無
塞ぎの虫が心臓を食い散らかす前に
人肌で暖めておやりなさい
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天才
天才は忘れた頃にやってくる
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黄金旋律
嵐の日の天使の吹くラッパ
海に沈んだピアノの泣き声
或る日拾った貝殻を耳にあてて思い出そう
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亡き王女のためのパヴァーヌ
二人同じ夢を見ていたけれども
一人は目覚め、一人は未だ夢見る
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楽器
つまびく人を失った楽器は どこかもの悲しい
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華氏451度
「華氏451度」とは摂氏220度C、紙が引火し燃え出す温度をあらわす
聖書からシェークスピアまで、この世にあるすべての書物が焚書されるという世界を描いた作家がいた
この世に存在する紙の本のすべてが消滅して、電子本だけの時代になった時、ネット嫌いの彼はなんと言うのだろうか
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想像力
創造と破壊、毒にも薬にもなる諸刃の刃
制御できないほど肥大化したら獏にでも食わせるしかない
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ムカシムカシ
オ爺サンハ山ヘ芝刈リニ行クフリヲシテ、オ婆サンヲ惨殺シマシタ、
なんてお話を現代の人たちは夢中になって箱型の電気紙芝居の前で繰り返し繰り返し見るのでした
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