夏の顛末
夏蝶の屍をひきてゆく蟻一匹どこまでゆけどわが影を出ず

「熱い茎」寺山修司

館のテラスに
麦藁帽子がすててある
イラクサのむこうに雲が荒れて
人間は もう帰らない
ああ
太陽の血のドラマは果てた
竜舌蘭がひとり 騎士の忠節で
没落のひかりを浴びている

「夏の顛末」村野四郎