2007年06月の記事


046「月」
カエルの声が
田んぼの水面に
月の影を落書きしては
急いで消した
梅雨の晴れ間の
夕べ
月の横顔
すまして笑う
カエル見上げて
歌ってみる
月まで届くか
跳ねてみる
梅雨の晴れ間の
夕べ
カエルの片思い
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045「知識」
わたくしを
美しく飾る
アクセサリー
あるいは
輝かせる
装飾符
だから
もっとたくさん
ほしいのです
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044「太陽」
饒舌なる天照大神
豊饒の時を迎えるために
使役し
指図し
暴露し
闇に身をゆだねる

傲慢なるゼウス
悦楽を手に入れるために
狩猟し
醸造し
飽食し
月を腕に誑しこむ

中心なる太陽
惑星を生み出し
育成し
放任し
爆発し
一葉の風となり終わる
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043「ダイヤモンド」
硬く
輝く
まっすぐな
あなたのまなざし
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042「ダーク」
肩を叩かれて
振り返れば闇
今日と明日の
境界線
踏み出せば
夜明け
振り返れば
遠のく薄墨
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041「底無し」
暗闇のなかに
綺羅綺羅とおちていくよ
私のことばたち
奈落には
底があるのかたしかめに
綺羅綺羅と
落としこんでみる

こたえはかえってきたか
かえってこぬか
まだまだわからぬ
もうすこし
まってみるのだ
きらきらと
言葉を削り落としながら
奈落の口に
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040「喪失感」
あなたのその
空っぽの中に
わたしがいるよ
ずっと
ずっといるよ
ちいさな卵になって
ずっと
まってるよ
空っぽの中に
わたしがいるんだよ
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039「切断」
迷いを一刀両断

亡き友の声を
記憶の底から
手繰り寄せ

撒き散らされた
情報の混迷を
切断する
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038「誓約」
約束するね
あなたより先に
死んだりはしないよ

もし
約束破ったら
殺してもいいよ
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037「スカート」
ハンカチのスカート広げて
照る照る坊主
明日 天気にしておくれ
あのこの笑顔が見たいから

雨の日はきらいなの
自転車通学
スカートぬれる
泣き虫お空の涙を拭いてよ
照る照る坊主
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036「白い帽子」
空の中に雲ひとつ
あなたの帽子に
似ているね

田植えのあとの
水面に映った
あなたの帽子

田んぼのあぜ道
散歩の途中
はずんでいるよ
白い帽子
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035「シャボン玉」
割れてから

気がつく

初恋
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034「嫉妬」
こころの奥に
蜘蛛が巣を張り巡らす
がんじがらめに
動けなくなるまで
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033「時間」
窓から入ってきた時間は
ベッドの横を通り
開けっぱなしのドアから
階段を下りて
リビングに初夏を置いていった
庭には満開の花
濃さを増していく緑
梅雨前の青空
今日という時間が
新しい
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032「桜」
恥じらいの薄紅さして桜色
散り舞う終わりに
永久を契るや
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031「紅玉」
みぞれが降り始める中
林檎の収穫
小高い山の中腹の畑
母の手があり
祖父母の手があり
叔母の手があり
弟の手があり
わたしの手がある
転がり落ちる林檎を
追いかけて
転んだ弟の笑い声
皆の笑い声
枝先の林檎は紅かった
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030「幻想」
誰かが
そう 植物研究家が
花は分解されても
それぞれが美しい
と言っていた

花弁と雄芯と雌芯と蕚
その中には水脈があり
蜜を作る器官があり
花粉を作り出す細胞があり
生の営みは続いてゆく

同じく

人間を分解してみる
頭には眼と鼻と口と毛
手と足と胸と腹と臀部と
生殖器官

もっとバラバラにしてしまえば
美しいか

呼吸器官と消化器官と排泄器官と
筋肉と血液とリンパ液と

鼓動する心臓

もっと分解してしまえば
白血球と赤血球と血小板と

あとに残されたものは
こころ という目に見えない
美しい言葉
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029「現状維持」
蚊を叩く
ボウフラが生まれる
ハエを打つ
蛆がわく
花が散る
種が芽を出す
鶏を〆る
卵が孵る
パンを食べる
麦が実る
老齢者が鬼籍に入る
男と女が睦む
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028「血液」
大地に立ち
両手を広げる
日の光をあびて
ぼくは深呼吸する
ぼくの中を駆け巡る
血潮
大地から流れ込む
冷気
ぼくは
一本の若木になる
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027「ケチャップ」
プレーンオムレツ
チキンライス
パスタに混ぜてナポリタン
ハートマークを
のせちゃおか
あなたが元気になるように
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026「携帯電話」
くす玉の割れるがごとく携帯電話
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025「狂うほど」
影すら映し出せぬ光線の中を
ただ立ち尽くす
上下さえも意識することなく
表裏までもが一体化
前進も叶わず
後退は愚か者のすることだと
己のうちから声がする
狂うほどに
狂うほどに

狂うほどに


狂ってしまえば
手に入るものが
ある
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024「雲」
ぽつん



あるよ

わたしの中に
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023「苦笑」
「覚悟しろ」
と飛んできた弾丸を
刀で切落とす
口の端で笑っているのは
マンガのヒーロー
覚悟するのは
何だろう
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022「空気」
窒素と
酸素と
二酸化炭素と
水蒸気と
炭素と
鉛と
亜鉛と
メタンガスと
マイナスイオンと
花粉と
埃と
放射線と
光と
時間と
電波を

全部吸い込んで
あなたへの想いだけが
はきだされて
この部屋に充満している
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