2007年04月の記事


007「意図した省略」
街路樹の下を通る
確かに誰かが触って
帽子を落とした気がしたのに
笑っているのは木もれ日だけ

角を曲がると焼肉屋さん
ニンニクに弱い体質で
そのときばかりはさすがのわたしも
眉間にシワ

夕べの合コン
勝手に話が進んで
今日はデート
わたしのプロフィール
省略済み
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006「一方的」
勝手に好きになって
勝手に恋をして
勝手に失恋して
勝手に嫌いになって

小説の中のあなたに
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005「いつか終わる」
電子レンジを開けたら
出し忘れたひとさら
暖めなおして
テーブルに並べる
いつもの朝

財布の中を見てみると
昨日買い損ねたレシピ

こんな普通な朝が
恐ろしい力でねじ伏せられ
悪魔が突然キスをするように
いつか終わる
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004「家路」
かけっこしながら
おうちへかえろう
かたあしけんけん
どっちがさきか
はるかぜ
あとから
かけてくる
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003「雨の中」
一枚もないことに気がつくには
時間が立ち過ぎて
戻れないところにきてしまった
お気に入りの傘をさして
写真をとってほしいと
言っていたはずなのに
どこかへ置き忘れてきてしまったよ
雨が降ると思い出す忘れ物
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002「悪魔」
ひとりプラットホームに立っているインドから来た鉄道マニアの視線。気になりつつ無視を決め込むと、入ってきた電車に乗り込む。窓の外を見ると、封筒から写真がこぼれて、誰かが必死でひろっている。手伝う通りすがりの人々。ついついおせち料理をつついている箸を連想。今年の正月はひとりで過ごした。たったひとりで

そう、ひとりきりで
枯れ果てた涙腺といっしょに

交わした契約は果たされたのよ
そう、静かに
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001「愛してる」
愛してる とピアノで弾いて
愛してる と耳元でささやいて
愛してる と抱きしめた

のに

君は腕の中からするりと抜けて
いなくなってしまった

愛して いるのに
愛して いたのに
愛して いたはずなのに

膝を抱えたぼくの耳に
風が君の声を告げた

「愛している」よ と
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ちょっと新しい挑戦
『詩ならひ』さんより、お題をお借りして、詩を書いてみる試み
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