2005年09月の記事


「夢の欠片」
悲しい欠片を砕いては
粉にして水に溶かして
売っている

埃まみれの路傍では
立ち止まる人もなく
売れ残り

夢の欠片は発酵し
アルコホルになってゆくのだよ
ひとりで飲んでは
また夢をみる
悲しい夢をみる
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「彼岸」
畦に咲く赤
彼岸花
涼やかに
この地を訪ねる
畝にわたる風
「こともなく」と
彼の辺に伝えし
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「朝風」
朝風を
避けて鉢裏
アキアカネ


アサガオに
日ざし映え
風切りの朝
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「形なきものによりそいて」
流るる風によりそいて
空を見上げる
同じ空の下で
笑う人
泣く人
怒る人
その生きているさまざまな
人を思う

形なきものによりそいて
歩き出す前に
足の下の大地を確かめる
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「どうぶつえん」
どうぶつえんのぞうが風にきいた
南の島では、ツナミがきて
たくさんののいきものがしんだって

どうぶつえんのきりんが風にきいた
北の大陸ではおおきな地震がおきて
おおくのいきものがけがをしたって

どうぶつえんのペンギンが風にきいた
東の山じゃたいへんな山火事がおきて
いろんないきものが逃げおくれたって

平和な檻の中で
天敵に襲われることもなく
餓える事もなく
身を守ることすら忘れて
腹を出したまま眠っている

その大昔
ヒトも餌を求め、寝床を探すために
大地を群れて移動した
それが生き抜くための旅
風はその守り神だったという

どうぶつえんのライオンが風にきいた
西の国では悲惨な戦争がおきているって
狂気に走った人間がおおぜい
殺し合いをしているって

どうぶつえんのライオンは
おおきなあくびをしただけだった
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「長月」
中空にかかる秋月
夢の横顔に似て
手に受ける光の
淡く悲しく
こぼれ落ちる
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