2003年11月の記事


「素通り」
忙しそうなので
ちょっと 微笑かけて
素通り

悲しそうなので
ちょっと 肩を叩いて
素通り

楽しそうなので
ほっとして
素通り

窓の向こうは
人の息吹が聞こえる
町並み

散歩するわたしに
声をかけて
寂しいあなたは
ほんの少し 暖かくなる
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「可能性」
    悟りきれないから
    言葉にしてみる

    希望が持てないから
    考えない

    ただ 歩む

    蹴飛ばすことのできる小石はいい
    目の前の
    岸壁をよじ登ることも
    破壊することもできないのなら

    よけて進めばいいじゃないか

    歩むことだけが 前へ進む可能性

    (べつに、後ろ向きに歩いたっていいんだけどさ)
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「第一印象」
     借り物の衣装を着た言葉は
     真実を見抜けない

     美しい花は
     美しいままではないのだと
     気付かぬままに
     通り過ぎる

     自分が借り物の衣装である事を
     我が物顔に誇示するのは
     間の抜けた嘘を隠すためなのか

     衣装を剥ぎ取れ
     真実という果実を
     たわわに実らせることを
     怖れるな
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「あかがねいろの月の夕に」
     隣に来た客 柿色してた

     道に咲く花
     恋して 紅さす

     木枯らし吹いて
     夜の帳は下りてくる

     あかがねいろした月の空
     まさか 赤いカラスは飛んでいまい
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「覚書」
     路端に咲く花を見たら
     わたしを思い出して

     道行くときに
     石を蹴ったら
     わたしを思い出して

     わたしは
     星をみたら
     あなたを思い出す

     昇る日の光を浴びたら
     あなたを思い出す

     風を感じたら
     あなたを思い出す

     電話が鳴ったら
     あなたを思い出すでしょう
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「こころ砕いて」
     己を忘れずなば
     私を抹消す

     吾れ愛しく思いて
     我れ意思を共にし

     自らを戒めん
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「言の葉」
     落ち葉拾うは
     風の音の
     来冬告げる
     和音ゆえ

     日の暖かさ
     極める曇天

     言の葉の
     揺れる翳は
     人の世の変わり目
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「霜月」
     地球温暖化の影響だと
     巷の風は騒ぐけど
     降る雨と陽気にほだされ
     麦たちはすでに芽吹いて
     霜を待つ

     ツバメはすでになく
     トビたちは山を降りて
     獲物を待つ

     木々は紅葉し
     冬支度
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「Uターン」
     出張へ向う夫を
     駅まで送る
     行程をUターンして
     自宅ヘ急ぐ
     まだ早い朝の国道は
     渋滞を避けたトラックの
     往来が激しい
     気分はスピード違反
     もう一度 Uターンして
     「忘れ物はない?」と
     声をかけたいが
     待っているのは娘たち
     慌しい朝は 目覚まし時計を
     かけ忘れた火曜日
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「蚊」
     夏の置き土産かもしれない
     不快音
     真夜中の格闘と
     睡眠不足を
     手足の赤斑を声明文にして
     命永らえるのは
     何のためなんだ

     宣戦布告する相手にしては
     その健気さに
     慈悲さえ与えてしまう
     愚かなのはどっちだ
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