2003年07月の記事


「忘れないで」
わたしのことを忘れないで
わたしの髪の毛の色
目の色
肌の色

それから
笑った回数
泣いた回数
怒った回数

そして
わたしの皺の数
ほくろの場所
あなたしかしらない
愛の形

わたしがいなくなっても
わたしを忘れないで
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「言い訳」
焦って返事をすればするほど
あなたの本音が見えてくる

言葉の裏に隠された
小さな嘘が透けてくる

言い訳するぐらいなら
黙ってて
あなたの嘘が哀しくなる
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「蒲の穂」
ココアパウダーをまぶしたような
シガレットケーキ

びろうどをまとった芋虫

カビたフランクフルト

どんな比喩でたとえたら
あなたにその肌ざわりが
伝えられるだろうか
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「科学者」
ウラン鉱石の放射線が
人々の医療に役立つように

ロケットが外宇宙の新発見に
つながるように

夢を託した技術が
悪意によって核兵器になった

人類が滅亡するのなら
それもよかろう
それはわたしの責任
そしてあなたの責任
だれのせいでもない
止められないのなら
覚悟はできている

あなたもわたしも神ではないのだ
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「クジラ」
海原の巨大な生命
波の音を聞き
風の音を聴き
大地の音を訊ね
わだつみに預ける息吹
悲しみも
憎しみも
慈悲に呑み込む呼吸
触れること叶わず
真似ること叶わず
ただ見舞う
命をいただくために
銛を射るクジラ守り
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「未来都市」
いくつもの症候群と
あからさまな感情と
冷たく放たれた外壁の光と
想像を越えた表現と(笑

スピードとカオスを
望んでいたのは人類

あらゆる電波と
不必要なスキャンダルと
名声と地位と富と
望むものをすべて
手に入れることができたのは
フィクションの主人公

人類が手に入れたのは
未来と言う名の
過去の遺跡
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「悲しみを踏み台にして」
悲しみを踏み台にして
高く跳ぼう
何が見えるだろうか

苦しみを踏み台にして
長く飛ぼう
風を感じるだろうか

悲しみでふくらんだ
気球は
あなたの暖かさで
高く上がる

悲しみを踏み台にして
あなたに愛を届けよう
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「水見回り」
四足の家族を連れて
野良道をいく
雨上がりの朝の空は
まだ重たく
すれ違う人もまばらだ

あれだけの雨が降ったのに
田の水は浅く
稲は心もとなげに
風に揺れる

水口を開け
勢いよく水が入るのを
確認する
ほとばしる水流

減反の水面には
風と流れが織り上げた
田じらみの幾何学模様
人の手を借りることなく
美しさはある


注*田じらみ:カッターで細かく裁断された麦の茎が、
水の上に浮かんだもの。多量にあると、
強風が吹くと植えたばかりの苗は、抜けてしまいます。
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「豆」
双葉の中に夢がみえる
大きくなるよ
本葉が出るよ
白い根が大地を抱える
大きくなるよ
いつか
樹になるよ
夢を広げて
君を待つよ
今はまだ途中だけど
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「情景2」
青から紫へと
変化する紫陽花の
縁取りを
窓の外にながめる

ひとの恋路もかくなるものか
色よく変化せよ
艶やかに終えるように
こころをクリア
透明なままに
あらゆる色を 受け入れる
雨の色
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「情景1」
雨を理由に
まどろむ午後
雑誌のページをめくるのも
曖昧な思考
窓から入る湿度70パーセントの風は
すこし冷たく
素足にまとわりつく

傾きかけた日射の気配
ベッドから下り
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階下へ

夕餉の支度
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