2003年04月の記事


「桜」
命を吐き出すように
しだれ桜
水面とたわれむ
枝桜
ナルシスの如くに
我が身を映す
満開の波

桜の深淵
とりこにされた時の狭間
酩酊する感情
花の海 桜の海
満開の淵

―――――――――― 桜満開の弘前城址にて
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「肖像」
父がいて 母がいて
あなたがいて わたしがいる
こどもたちが笑っている

家族の歴史が
切り取られアルバムに
しまわれる

笑っている顔
悲しみも怒りも
すべてを打ち消すように
ただ一瞬の肖像
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「待ち人」
こんな時間を昔も過ごした
ページをめくりながら
あなたを待つ

約束の時間よりは
少しばかり早いけど
待っている時間も
うれしくて
木漏れ日の下
あるいは、駅のベンチ
お気に入りの喫茶店の
お気に入りの場所

座ってページをめくりながら
あなたが来るのを待っている

あなたがドアを開けて
笑いかけてくるのを
待っている あの日に
もう 帰れない
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「過去生産」
時間を重ねて
過去生産
今を重ねて
過去生産

未来は降る雪
積もれば過去
手にすれば
溶けてなくなる
パラドックス

コトバが重なり
過去生産
あなたのセリフは
昨日の思い出

過去を作って
わたしは生きる
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「桜に雨が降る」
張り付いた花びらを
模様のように
傘をさす

あたりは一面
桜色カクテル
月もほろ酔い

わたしもほろ酔い
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「お為ごかし」
嘘偽りのコトバさえ
華で飾れば美談になる

志だと刀を振りかざし
切り捨てたのは
出来レース

誰かの為にと
動いてみても
他人の口には戸は立たぬ

知らぬ存ぜぬ通し切り
義理人情は
化石なる

ビジネスライクに投じれば
かけ引きじょうずの
お為ごかし
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「棘」
なにげないコトバが
あなたのこころに突き刺さる
なにげない手が
あなたの行く手をさえぎる

薔薇の棘は
我が身を守るためにある

傷ついたこころは
棘の鎧を身に纏うべく
沈黙の部屋へと扉を開く
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「“終わり”と“始まり”と」
何が終るというのだろう
勝利が終わりだというのだろうか
何ゆえの勝利だ
敗北が悪徳だというのなら
おまえの足元を見るがよい
勝利は偽善だ
敗北は始まりだ
終わりなんかない
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「恋うた」
やらせの雨に
濡れなずむ
淡き紅に霞む影
色重ねし春盛り
誰が奏でる
恋うたの調べ
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「映画のように」
あなたに落とされて
ハッピーエンドなら
それは 素敵なラブストーリィ

あなたが撃ち落されて
屍をさらすのなら
アンハッピーな戦図

悪党に打ち落とされるより先に
あたしが落としてあげる
あなたを
あたしの捕虜にしてあげる

だから

生きて 帰っておいでよ
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